コイゴコロ





*コイゴコロ*


「さーて、今日もライブに向けて練習するかなーっと」

(…おい、何でぼく達がコソコソしなくちゃならないんだ)
(だって村田がコソコソしてるから後を付けてみたくなったんだよ)
(だからって、ぼくまで巻き込むな!)
(ついて来たのはそっちだろー?…っ、あんまり暴れるな!バレるぞ!)
(仕方ないだろ!このクローゼット、服が多すぎて身動きが)
(派手な衣装ばっかりだな…って、ん?!)

「スイッチオン!と」

(うっ!だ、大音量だ!!)
(うるさっ…あれ?でもこのイントロ、聞き覚えが…)









忘れない 恋心
いつまでも 恋心


(な、なんだ?)
(あ…あの曲か!)


渋谷はいつもミルクティー
(は?)

帰り道の自販機で
(え?)

新しいスパイクとボール
そして試合の計画が話題
(今、ユーリの名前が出てこなかったか?)
(出てきた…けど)


恋バナもしたいけれど
ヤボな性格がバレちゃまずい
(何…これ?)
(どういう事だ…?)


どうしよう婚約者が邪魔する
(ぼくか?)

こんなとき妙に仲がいいよね
(当たり前だ!ぼく達は愛しあってるのだか…むぐっ)
(ちょ、ヴォルフ声大きい!)

これがウワサのプーレーダーなのか
(プ、プーレーダーだとっ?何だそれは!)
(ブッ、ぷ、プーレーダー!)
(笑うなっ!)

困るね 鈍感 とても
(…鈍感って、どういう事だよ)
(まさか、アイツ…)


少し長めのまつげ揺らして
泣いている渋谷を見た
(え、何で知ってるんだ…)
(何?泣いたのかユーリ!)

何かな 何なんだろなベイビー
涙かわいや抱きしめたい
(!!)
(だ、だきしめたいだとーっ?!)


眞王に相談しようか
でも多分ケンカになるから辞めとこう
(ケンカって…おい?ユーリ?)


どうしよう四千年の歴史は
こんな時全然使えません
(な、何赤くなってるんだ…まさか、お前)

厳しいね恋愛と言うのは
なかなか 鈍感 とても
(あーあーあーもう嫌だおれは聞かないぞー!)
(おい騒ぐな!混乱してる場合か!)


出来れば一緒にラブりたい
(…っ!)

いちゃいちゃと仲睦まじくふたり
(な、なんて事を…ぼくのユーリに!)

本当はだれか好きな人が
いること 知ってる けれど
(へ?)
(そ、そうなのかユーリっ!!)
(ちっ、ちが…!!)


どうしよう
上手く行かない恋
四六時中
もっと近くに行きたい
(ゆ、ユーリ…顔から湯気が出そうだぞ?)

誰もが 悩んだ事なのか
まったく 鈍感 いつも
(…う、ううううるさい)


側にいた渋谷ともいつかは
離れて行くかも知れないけど
(そんな事…)
(…これがアイツの、本音なのか?)

二度とは戻らないそれなら もうちょい 攻めの 姿勢で
(え!)
(せ、攻めだと?!それならぼくだって…!)

忘れないいつまでもこの恋
失くさないやっと掴んだ渋谷を
(ちょ、ヴォルフー!?)
(アイツに襲われるならその前にぼくが…!)
(や、やめろっ!…あ)
(…う、ううー…)


汗かき 息はずませながら 今日もまた きみと 走る
(…気絶、した?)


忘れない 恋心
いつまでも 恋心












****

バターン!!

「ぎゃー!!」

「わ、悪い村田!ヴォルフが気絶したみたいで!頭打った…」

「え!ちょっと見せ…あぁ、多分少しすれば意識が戻るよ」

「…よかった」

「うん…じゃなくて!いきなりびっくりしたじゃないか、人のクローゼットから飛び出てくるなんて!」

「よ、よばれて飛び出て」

「ジャジャジャジャーン!…って魔王だけどさきみも…」

「…ご、ごめんなさい」

「…気付かなかった僕も僕だけどさ…。で、聞いた?」

「…全部聞かせてもらいました」

「そっか…あーあ、まだ秘密にしておくつもりだったのに」

「…あのさ、今の歌って…」

「んー、僕の、素直な気持ち。かな?」

「…あぁ」

「ごめんね?」

「…なんで、謝るんだよ」

「だって僕の気持ち、知ったら迷惑でしょ?」

「…そんなこと、無いけど」

「…」

「…う、嬉しかった、けど」

「…本当?」

「…それと、さ。好きな人…別に、いないから」

「渋谷…」

「む、むらた」

「ユーリー!!!!!」

「!」

「!!…っヴォ、ヴォルフ?」

「おみゃーまたそうやってしりがる…ぐぴぴ」

「…どうやら寝たみたいだね…」

「…ハハ」

「…アハ八ッ」

「…村田」

「な、何?」

「…ありがと、な」

「いや…僕の方こそ」





(ある意味オチが無い落ちですみません)