2つの心




その指で触れて
優しく触って

あんたの指じゃないと
何も感じないんだよ








「コンラッド、いる?」

部屋で本を読んでいると思ってもみない、けれどとても喜ばしい客人が顔を覗かせた。

「いますよ」

扉の向こうの彼と目を合わせながら微笑む。するとユーリは一瞬立ち止まって目線を泳がせた。

「どうかした?」

「べ、別にっ?」

声をかけると気付いた様に視線を上げ、慌てた様に部屋に入ってくる。
何か変だと思いつつも近づいてくるのを待っていると、ユーリが突然声を上げた。

「わあっ!」

「え?」

どてっ。

「ユーリ!?」

慌てて椅子から立ち上がる。ユーリが体勢を崩して床に転んだから。
…何もない床で。

「いってぇー!」

「どこか打ちました?」

ユーリに駆け寄り様子を伺う。どうやら大した怪我は無さそうだ。衝撃で手のひらと足を打ったみたいだが。

「ユーリ、一応ギーゼラに診てもらいましょうね」

怪我の大小はともかく、何も無い場所で転んだ事が気になった。疲れが溜まってるのかもしれない。
するとユーリがバッと俺の顔を見て首を振った。

「いや、全然大した事ないから気にしないで!へ、平気だからさっ!」

「平気って…そうは見えないんだけど」

困ったな、という様に見るとユーリはまた瞳を泳がせて、ベッドに視線を合わせた。

「あ、じ、じゃあベッドで休めば治るから!」

焦った様に笑うユーリはどこか変で。
やはり疲れてるのかもしれない。

「…それがいいですね、取りあえず俺のベッドで我慢してください」

折角来てくれたのに直ぐに帰したくはないからね。

「我慢だなんて、そんな事…わっ!何すん…」

ベッドまで運ぼうと抱き上げると、急に顔を赤くするユーリが可愛らしくて嬉しくなる。
部屋に入ってきた時は久々に2人の時間が過ごせるかと思ったけど…まぁ仕方ない。

「おれ1人で歩けるよっ!」

ユーリも可愛い事だし。

「いいじゃないですか」

笑いながらベッドまで移動する。両腕にかかる柔らかな重みが温かくて、照れる頬にキスを落としたくなる。
でもそうしたらきっと抑えが効かなくなってしまうだろう。

「……」

笑顔で見つめるとユーリは急におとなしくなる。それが照れからくるものなら嬉しいけれど。

「はい、着きましたよ」

ベッドにユーリを降ろすと、頭をそっと撫でる。

「寝ますか?」

「へ?」

それは「しばらく寝てますか?」という意味合いで言ったんだけど、ユーリは違う意味で取ったらしい。目を見開いて真っ赤になった。

「あ、そういう意味じゃなくて」

思わず笑いながら言うと、ユーリは更に顔を赤くする。

「ちっ…!違う違うおれは何もそんなっ」

慌てて否定するって事はやっぱり。
苦笑しつつもユーリに告げる。

「大丈夫、今日は何もしませんよ」

「な、何もって…」

「何って…言って欲しいんですか?」

「い…言わなくていいっ」

からかうように笑うとユーリは益々慌てて。コロコロと変わる表情が可愛くて楽しい。

「じゃあ俺は本でも読んでますから」

そう言って椅子に戻ろうとすると。

「?」

「…あ」

何か引っかかると思ったらユーリに服の裾を掴まれていた。気づいて振り向くと慌てて手を離される。

「あ、…えっと」

何と言おうか戸惑ってる姿に自然と微笑んでしまう。
ヴォルフもこういう時期があったよな。心細いのか、いつも寝る前は行かないで、と言われたっけ。

「…側にいた方がいい?」

瞳を覗くように目を合わせるとユーリは恥ずかしそうにこくりと頷く。

「…うん」

その仕草に胸が高鳴る。本当は今すぐ押し倒してしまいたいが、ぐっと我慢。ユーリの体の方が心配だからね。
本を取ってベッドに腰掛けると、寝ていたユーリがむくりと起きあがった。

「ん?」

笑いかけるとユーリがじっと見つめてきた。小さく口を2、3度ぱくぱくと動かしたかと思うと、どこか違和感のある口調になる。

「こ、コンラッド…瞼にまつげがついてる」

「あ、そうですか?」

笑いながら取ろうとするとユーリがそれを遮り、一瞬目を泳がせる。

「と、取るから目ぇ瞑って?」

「ああ、ありがとう」

何だ?何かおかしい。
いつもと明らかに違うユーリの態度に疑問を感じつつ、ユーリに言われるがままに目を閉じた。


瞬間、柔らかい感触が唇に。


……え?


いきなり止まった呼吸に驚いて目を開くと、目の前にユーリの閉じられた瞳があった。

「!?」

…まさか、ユーリがキスをしてくるとは。
思わぬ展開に驚いていると、ゆっくりと唇が離れてユーリと目が合った。薄く開いた瞳がたまらなく色っぽい。

「ユー…ッ?」

声をかけようとした途端、赤い顔をしたユーリに肩を掴まれた。

「っ?」

そしてそのままベッドに押し倒される。突然の出来事に油断していた俺は、バフッと音を立てながらユーリに組敷かれた。

「ちょ、ユー…?」

「……」

顔が近づいてきたと思ったら唇がそっと首筋に触れた。ユーリがゆっくりと、躊躇いながらそこを吸い上げていくのが解る。

その瞬間、胸が震えた。

「ユーリっ……!」

「わあっ!」

背をきつく抱きしめて、躰を反転させる。一気に形勢逆転。
俺の下で目を丸くしてるユーリにふっと微笑む。

「…今日はどうしちゃったんですか?」

大方予想はついているがわざと聞いてみると、ユーリの頬が更に朱に染まる。

「べ、別にっ…」

「攻めてみようと頑張ってくれたんですか?」

「なッ…!」

どうやら図星らしく、言葉に詰まって口を結ぶユーリに触れるだけのキスを落とした。

「…さっきのキスは驚いたよ?」

唇を離し、髪に指を埋めながら笑うと、ユーリは悪戯っぽい笑みを浮かべた。照れが勝って少し口の端が引きつっているのがユーリらしい。

「だろ?」

「うん…嬉しかったよ」

素直な感想を伝えると、ユーリは満足気ににっこりとする。
俺も笑い返すと耳元でそっそ囁いた。

「もしかして転んだのも…わざとですか?」

途端、ユーリの目が丸くなった。…図星だな。

「…な、何で?」

「動きが不自然でしたよ」

「うっわ…」

口ごもるユーリに笑みが止まらない。何だってこんな回りくどい事をするのだろう。

「直球で来ればいいのに」

ユーリの得意技じゃないですか、と付け加えてくすくす笑う。
すると「だって…」と子供みたいに口を尖らせる。
その、仕草に残る幼さが可愛い。

「直球だと…恥ずかしいから」

「変化球で攻めたってわけですか?」

ついつい笑ってしまうとユーリは拗ねたように俺を見据えた。

「これでも一生懸命考えたの!」

「俺をリードする方法を?」

「……、ん」

照れながらも頷くユーリの目尻に音を立ててキスをする。可愛い恋人の機嫌を直すにはこれが効くと経験済みだ。
髪を撫でると自然と笑顔になるユーリはとても素直で。益々愛しくなる。

「じゃあ…俺は我慢しなくていいんですね?」

視線を絡ませて問えば、ユーリはゆっくりと瞬きをして、小さく口を動かした。

「うん…」

その仕草に抑えがきかない程欲情する。
−どうしてそんなに可愛いんだろう。
俺を見つめる瞳。吐息を吐く唇。薄く色づく頬。
その全てが俺を誘っているようにしか思えない。
そのまま引き寄せられる様にユーリの唇にキスを落とした。

「んぅ……」

浅いキスから深いキスへと、ゆっくりと角度を変えていく。ユーリの唇に舌を差し込み、捕まえて絡ませてみれば、ユーリの躰がぴくりと反応して。吸い上げてみたり這わせてみたり、着実に熱を分け合いながら手は服のボタンを外していく。

「ッ、」

それに気づいて躰を固くするユーリを落ち着かせるように、ゆっくりと髪を撫でる。
いつまで経ってもユーリは馴れないままで。その様子を可愛く思いながら舌を吸い上げる。
同時に胸の突起に触れると、小さな喘ぎ声が喉の奥から漏れた。

「んぁ…」>

それを合わせた唇から飲み込んでしまうと、ちゅ、と音を立てて解放してやる。唇の端に溜まった唾液を舌先で舐めてやると、ユーリは熱い吐息を漏らした。

「ん…」

頬にかかる息と小さな声に熱が上がる。高鳴る心音を悟られない様に、ユーリの胸元に唇を這わした。キュッと吸い上げると薄く開いた唇から息が漏れる音がする。ユーリも着実に熱が上がってきてるみたいだ。
顔を上げると、潤んだ瞳と視線がぶつかる。

「コンラッド…」

「…ん?」

「おれが…服、脱がしたい」

そう言うと両手で俺のシャツのボタンに手を掛ける。体勢のせいか間違えながらも一つ一つ外そうとするユーリの様子は可愛くて。思わず胸の突起を摘んで意地悪する。

「やっ、コンラッ…」

期待通り躰を震わせるユーリを益々焦らせたくなって。

「ホラ、手が止まってますよ」

急かしながらも指はユーリの首筋やうなじをなぞる。指に唾液をつけて突起を摘めばユーリの指が止まる。

「んっ、ぁっ…やぁ」

「どうかしました?」

「も、いじわるぅっ…」

身を捩らせながら一生懸命ボタンを外すユーリの邪魔をしたくて、つい躍起になってしまう。
どうにか最後のひとつを外した時にはユーリの乳首はピンと固くなっていた。

「っ…」

「よくできました」

頬を紅潮させたユーリに微笑むと、前がはだけたシャツを脱ぐ。
多分ユーリは積極的に行きたかったんだと思うけど。

「む〜…」

…誘ってるようにしか見えなかったよな。
でもまぁ、嬉しい事に何ら変わりはない訳で。

「…っぁ!」

主張し始めた下の膨らみをそっと撫でると、ズボンに手を掛ける。
思わず上げた声に手で口を塞ぐユーリに目だけで笑いながら下着ごと脱がした。

「…ゃ」

傍目から見ても熱を持っていると解るユーリのソレは、完全では無いがしっかりと主張をしていて。両手で握りこんでみるとユーリの背が上がった。

「はぁッ…」

そうやって目を瞑る姿は酷く俺を興奮させて。もっとその甘美な表情を見たいと思ってしまう。

「ユーリ…気持ち良くしてあげるね?」

両手を使ってユーリの自身を梳き始める。片手で先端を刺激しながら片手は何度も上下に移動させる。段々堅くなっていく感触を楽しみながら、滲み出た汁を全体に塗り付けていく。

「っぅ…んぁっ…」

余程気持ちいいのか、ユーリの唇からは普段以上の甘い喘ぎが漏れていて。
限界が近いのかシーツをぎゅっと握りしめている。

「もう限界?」

先端をくるくると刺激するとぴゅっと白濁が少し漏れた。ユーリの首が縦に振られて。

「も…っ…だめぇっ」

切羽詰まった甘い喘ぎに胸が高鳴る。
そのまま誘い出す様に自身を擦ってやると、掠れた嬌声と共にユーリの精が両手に溢れた。

「良かった?」

そう問えば、潤んで焦点な合わなくなった瞳をこちらに向けて深く吐息を吐く。目を瞑ると目尻に涙が溢れ、それは一層俺を煽る。

「…ぅん」

誰が教えたでも無いのに男心をくすぐる仕草を身につけているユーリは、俺を満たすと同時に不安にもさせる。
ヴォルフがユーリを心配する気持ちも実際良く解るわけで。出来る事なら誰の目も届かない何処かに閉じこめて、俺だけのものにしてしまいたい。

「そう…じゃあ次は俺を気持ち良くさせて?」

それが無理なら、せめて心だけは。

「っひぁ…っ」

俺の元に居て?

「まだ指しか入れてませんよ…?」

「っ…驚いただけだよっ…」

蕾にユーリの精で濡れた指を入れれば躰は素直に反応して。ゆっくりと解す様に入り口から奥へと動かしていく。

「くぁ…は…」

異物感に呻くユーリの気を逸らすために唇にキスを落とす。重ね合わせて啄めばユーリは必死に息を吐き、その懸命な姿は凄く可愛らしい。
乱れた姿を見つめると中心が疼くのを感じた。

「指…増やすよ?」

早く繋がりたいが為に思わず一度に2本増やしてしまった。ユーリの体が硬直したのが解ったが、自身を擦ってやると肩を震わせる。

「ぁっ…」

ユーリの腰が無意識に動いた。どうやら中に入ってる指が性感帯に触れたらしい。わざとそこを擦るとユーリの様子が変化する。

「ひぁ…そこッ…やっ」

「ここ?」

「あっ…だめっ…コンっ…」

力を入れて強く擦ると、ユーリの自身が膨張し出す。

「ここがいいの?」

「ひっ、やあっ…っ…」

わざとそこだけを刺激するとユーリの背が上下に揺れる。涙を滲ませて快感に耐える姿に、俺もそろそろ限界になってきた。

「ユーリ、いい?」

そう言って指を抜くとユーリは一瞬物足りなさそうな顔をして。

「指の代わりに俺を挿れていい?」

苦笑しながら尋ねるとユーリは真っ赤になった。

「なッ…」

「それとも指がいい?」

蕾の周りを撫で回しながら微笑むと、ユーリが恥ずかしそうに目を合わせて。

「……コンラッドがいい」

と、消え入りそうな声で呟いた。

「ユー…」

思わずその言葉だけで果ててしまいそうになりグッと堪える。ユーリの些細な言葉や仕草に簡単に熱を持つ自身に苦笑しつつ、先端の濡れた自身をユーリにあてがう。

「ぅっ…ぁ…」

そのままゆっくりと腰を進めればユーリが眉を寄せる。目を瞑って痛みに耐える姿すら俺を煽る、なんて相当だな。

「ユーリ…平気?」

「…へ…いきっ」

こんな切羽詰まった声も、俺しか知らないものだと思うと胸が高鳴る。
圧力に逆らいながら腰を埋めると、ユーリが手を伸ばしてきて。
申し合わせた様に指を絡ませると唇にキスを落とした。

「ふっ…ぅ…ん」

唇を合わせるだけで、離れている躰がひとつになる気がする。痛みを和らげることは出来ないけれど、甘い感覚をもたらすことは出来ていると思う。だからユーリはいつも、こうしてキスを求めてきて。

「…っ」

その度に俺はユーリが満足する以上のキスを贈りたいと願うんだ。

「んっ……」

「ユーリ…動いていい?」

額をくっつけて問えば、ユーリの中が軽く締まる。そのまままた軽くキスを落とせば、柔らかい声が聞こえた。

「ん…動いて…」

熱を持った言葉はスレスレの位置にある俺の唇を撫でる様に放たれる。隙間から入り込んだユーリの声は、耳からと口からと両方で俺を刺激して。

かなりキた。

「…っあ!」

ぐっ、と腰を掴むと一気に引いて突き上げる。ユーリの眉が寄ったが見ていないフリで律動を始める。

「はぁっ…ぁっ」

結合部から水音が漏れる。それはユーリの喘ぎと重なって俺を刺激する。気持ち良い締め付けが自身から伝わってきて、思わず頬が上がった。

「っく…んあっ…」

「ユーリ…」

名前を呼べば応えるように後ろがキュッと締まり。その反応に驚きつつもユーリの感じる場所を突いていく。

「ぁっ…コンラッ…ドぉ…やぁっ」

途端にユーリの嬌声が響く。そこを擦る度に過敏に反応しながら無意識に腰を振るユーリは酷く艶めかしくて。
乱れれば乱れる程、俺が興奮すると知っているのだろうか。

「はぁっ…もっ…だめぇっ…!」

背を仰け反らせながら限界を訴えるユーリに、俺も絶頂へと追い上げる。

「あっ…コンっ…」

倒れ込む様に呼吸を塞ぐとユーリの締め付けが顕著になって。
銀糸を引っ張りユーリの先端をキュッと擦ると、後ろがグッと締まった。

「あぁっ…!っ……!!」

先端から白濁が溢れると同時に導かれる様に俺も熱を放った。ドクドクとユーリの中で流れていく精を感じながら、心地よい脱力感に襲われる。

「ぁ…コン…ラッド」

「…ユーリ」

荒く息を吐く恋人の頬に小さくキスを落とすと、だるそうに持ち上げられた手が俺の頬に添えられ。

「ん…」

そっと重なる唇に自然と目を閉じていた。舌でゆっくり唇を舐められ、離される。
目を開けると口を尖らせたユーリがこちらを見ていた。

「コンラッド…」

「ん?」

どうしたのかと思えば、ユーリは悔しそうな顔をして。

「おれ…攻めるのやっぱ無理だった」

「……」

そう言って拗ねる姿がたまらなく愛しい。
それをユーリは全く気づいてないからなぁ。

「……てゆーか…攻めるって何?」

「さぁ」

「さぁって…コンラッドも解らないのかよ?」

「えぇ」

笑って答えながら隣に寝ころぶと、ユーリは意外そうに俺を見つめる。
そんなユーリもまた可愛くて。

「だって俺は貴方の愛を体中で受けてるんですよ?」

そしたらユーリは攻めって事でしょう?と言ってみると案の定、顔を赤く染めた。

「は…っ、恥ずかしい事言うなよなっ」

「違うんですか?」

どうしてもユーリの口から言って欲しくて、わざと聞いてみる。

「ち、違わない…」

すると観念した様に小さく呟いた。
ユーリ、その一言が俺を満たすんだよ。

「ユーリはそのままでいいよ」

「そのまま…?」

「頑張って攻めるより、自然体のユーリでいていいんだよ」

計算なんかしなくたって、俺の心はもう貴方の物なんだから。

「…ホント?」

「うん」

「そっか…」

微笑むと、ユーリが嬉しそうに笑顔を向けてきた。ゆっくりと口を開くと、俺の目を見つめる。

「おれさ、いっつも…こういう時受け身ばっかじゃん?自分から誘うとか…しないし」

ユーリの瞳に、俺が映る。

「したくないわけじゃないんだぜ?っでも…恥ずかしくて…。けど、もしコンラッドに呆れられちゃったりしたらどうしようって…思って、さ」

「……」

「おれ、コンラッドが好きだから……あれ?あ?今おれ何てッ…」

「ユーリッ」

思わずギュッと抱きしめていた。

「わっ」

何てこった。嬉しすぎてどうすればいいのかわからない。
まさかユーリが、そんな風に想っていてくれていたなんて。

「俺がユーリに呆れるわけ無いでしょう?」

そう笑顔で言えば、ユーリは目を丸くして、次の瞬間上目遣いではにかんだ。
あぁ、幸せってこういう事を言うんだな。

「…コンラッド、痛いよ」

「我慢してて」

嬉しそうに抗議をするユーリを離すまいと抱きしめる手に力を入れる。
この喜びが少し収まるまでもう少し、このままでいて。

「コンラッド…」

応える様に回されたユーリの腕の中で、俺は酷く幸せな一時を過ごした。







どうか
どうかこのまま

2つの心が
隣にありますように





end.