ひみつ。







「あ…」



いつの間に寝てしまったのか。
時計を見ると午後も4時を回ろうとしているところ。
ベッドに寄りかかって、いつの間に眠ってしまって…。

「って」

ちょっと腰が痛いな。
こんな体勢で寝てるからいけないのか。
そういえばTVが、いつの間に消えてる。

「…」

振り仰いでベッドを見ると、渋谷も心地良さそうに寝ていた。
薄く開いた口元から寝息がこぼれている。
手にはリモコンを握ったままで、思わず笑みがこぼれた。

「……カゼ引くよ」

寝起きはどうも、声が低くて小さくなる。
うたた寝なら尚更で、もうちょっと寝ていたい気もするんだけど。
Tシャツが少し捲れているのを見て、何かかけるものを持って来ようかと立ち上がろうとした時、ふいに目に入った。
すっと通った喉仏。
胸の奥がなんだか、じんわりするのが解った。

「…」

それは言葉にしたら割れてしまいそうな感情で。
それまでの僕は、こういう、ふいを突く様な事はした事が無かった。
でもゆっくり、渋谷の頬に顔を近づける。
そのまま唇を落として、そっと顔を上げると急にドキドキした。
それはもう、眠さも吹き飛んでしまうくらいに。

「…ゆーり」

名前を呟いた唇に手を当てると、ふいに胸がぎゅっとなる。
どうしてか目が熱くなって、慌てて立ち上がった。
部屋を出て、洗面所に向かいながらゆっくり、ゆっくり呼吸をした。
泣いてしまいそうだった。

「………はぁ」

それは言葉にしたら、失ってしまいそうな感情で。
胸が詰まる程に愛しいって、あるんだ。
バスタオルを抱きしめながら。
一人、そんな事を考える。
渋谷にも言えない秘密が、出来てしまった。






生きていく為に泣くこともある