運命の人








一番好きな人とは結婚するなって、誰かが言ってた。
一番好きな人と結婚すると、愛されたい気持ちが大きくなって疲れちゃうんだって。

「へぇ…」

「村田はさ、そういうのどう思う?」

「僕?まぁ…解らなくは無いけど。二番目に好きになった人と結婚しても後悔が無ければいいんじゃないかな」

「…そっか」

「…何落ち込んでるのさ、解り易いなぁきみは」

「なっ、落ち込んでねぇよ」

「顔に書いてあるよ、僕と結婚しない方がいいのかって」

「はぁ?おれそんな事思ってねーよ!」

「動揺するとすぐ怒る癖、直した方がいいんじゃない?」

「何だよそれ…」

「…だってさ、一番好きな人がいたとしてもどうしようもならない事情で結婚できないってのもあるだろ?相手の家柄とか、前歴とか。結婚したくても相手が死んじゃったとか」

「…それは、今の話じゃないだろ」

「…僕と渋谷の事を言いたいの?」

「……」

「だって僕達、日本じゃ結婚出来ないよ」

「…別にっ、おれは村田と結婚したいとか言う訳じゃねーよ」

「そう?僕はしたいな、渋谷と」

「……へ?」

「でも一番好きな人とはしない方が良いって言うなら、出来ないね」

「……お前、おれの事一番好きなの?」

「当たり前だろ。そうでなきゃ付き合わないよ…って渋谷、真っ赤」

「だ、だって村田がそんな事言うから」

「あれ?言った事無かったっけ?愛してるって」

「……」

「じゃあついでにもうひとつ。僕は結婚する人は一番好きな人じゃなくて、運命の人とすれば良いって思ってるから」

「…運命の人?」

「うん。そしてそれは、渋谷だと思う」

「…村田の、運命の人、おれ?」

「うん。…って今、カタコトみたいだったよ」

「……あー…」

「…渋谷、仲直りしよっか?」

「…元々ケンカしてないじゃん」

「それでも、いいから」







星がない世界なら 目を閉じて証明するのに