春のにおい






「あ、春のにおい」

「ん?」

「今ね、春のにおいがしたの」

「春のにおい?」

「うん、暖かくて爽やかなイメージなの、春って」

「ふーん…」

「夏の前にも夏のにおいってするのよ?」

「秋も冬もか?」

「そう、気をつけて感じるとね。すぐ解るのよ」

「気をつけた事なんかないからな」

「楽しいのに」

「楽しい?」

「例えば毎日同じ木を見て、一年での移り変わりを観察してみたりするの」

「…」

「軒先に巣を作った鳥が次の年新しい子を産みにやってきたりするのをみるのも楽しいわ」

「…」

「勿論、そんな事感じてる暇も無いこと位知ってるけど」

「…忙しいからな」

「日々お疲れ様です」

「…今度、花見でも行くか?」

「…いいの?」

「嫌いじゃないならな」

「好き!」

「…何が?」

「?お花は好きよ」

「……」

「…あ!」

「何だ?」

「春のにおいがいっぱいの所がいいわ」

「…善処するよ」

「それとね」

「?」

「きっとね、人も一年経つとまた変わると思うの」

「あぁ」

「だから忙しい中でも、私の何処が変わっていくかをちゃんと見ていてね?」

「…」

「私もそうするから!」

「……あぁ」




2006/2/15より。
一応ダルジュリだったり。2人はちゃんと好き合っていたら良いと思う。
愛しあってはいなくとも、ね。