きみのことを。






君をずっとずっとずっと
ずっと愛していた
優しい香りがする春を
抱き締めるみたいに
穏やかで
柔らかくてそれでいて
気持ちのいい








「渋谷!」

「村田」

「卒業おめでとう」

「あぁありがとう、ってあれ?村田も花持って…」

「僕も今日、卒業したんだ」

「そっか…あ、おめでとう」

「ありがと」

「村田、進路は決まったのか?」

「うん、一応大学に行くよ。渋谷は?」

「おれは…戻るよ」

「…そうかぁ。今日は打ち上げとか無いの?」

「あるけどパスしてきた」

「僕も」

「……そ、か」

「……あのさ」

「な、何?」

「…これ、受け取ってくれるかい?」

「…花を?」

「貰い物だけどさ、渋谷にあげたくて」

「青い花だから?」

「そ」

「…ありがと」

「こちらこそ」

「…おれも、村田にあげたいんだけど」

「何を?」

「………これ」

「あ…ボタン」

「……ダメか?」

「…………ううん、嬉しい」

「おふくろには内緒だからな」

「わかってるよ…ありがとう」

「…あのさ、村田」

「ん」

「…ありがとう、な」

「…僕も」 

「…上手く言えないけど、おれさ。お前にたくさんたくさん、気持ちを貰って嬉しかったよ」

「…うん」

「だから、さ…うん」

「……手、握ってもいい?」

「え?、あぁ」

「……あったかいね」

「…そうか?」

「うん、……ずっとずっと覚えてられる」

「…うん」

「…渋谷、だいすきだよ」

「…おれも」

「………だいすき、大好きだよ……」

「…うん、大好き」

「……………バイバイ?」

「…違うよ」

「…」

「おれはずっといるから、だから…出来たらこの先もおれを」

「渋谷…」

「…むら、た」

「渋谷…やだ、そんな顔しないでよ」

「…ごめ、ん」

「わかってる、忘れない、僕も忘れないから…」

「…ありがとう」

「…大好きだよ、渋谷」

「おれだって…」








君をいつか柔らかい春の風の中で
無くしてしまう気がしていた
ずっとずっとずっとずっとずっと愛していたいと
それでも願っていたのに
季節は優しいから




君のことをそっと
浚っていった。










2007/3/30より。
ムラユリムラ。
携帯日記での最後のお話でした。
携帯サイト閉鎖にかこつけて、2人のこんな結末を提案してみたり。