バイバイと僕はきみに言う




バイバイと僕はきみに言う

バイバイときみは僕に言う


ぼやけたふたつのおたがいの、
りょうてがそらをきりひらく、
くうきがまじってあたらしく、
ゆうやみとかしてながれてく。




「…バイバイ」

振り返らないから後ろ姿は余計切ない。
おっかけても追い付けないのにね、バカだな。

「……」

だけど足は勝手に走って、遠くなる背中だけを見つめてる。
息を吸い込めば、漏れるのはきみのなまえ。

「…しぶやっ」

届かないよ。わかってる。最後だって信じていたのに、声も、笑顔も、名前を呼ぶのでさえも。
なのにどうしてそばにもっとずっといたくてたまらなくてそれははてしなくあふれてぼくのこころをおおいつくして。

「…しぶやぁっっ!」

全てが、剥がれ落ちて代わりに世界がこうしてきれいな色に変わる。
どうして?

「…!」

振り返って折り返すきみの姿が見えた途端、胸が千切れそうで。
あいしてる。

「むら…」

「好きだよっ…きみが…っ」

「えっ…ってちょっ!」

追い付かれるから逃げるんだ。
到底きみには敵わないから、僕はどこまででも逃げていたかった。
きびすを返して走りながら涙だけが溢れる。息切れしそうな呼吸に混じって。

「…むらたっ」

ほら、きみが捕まえる。
僕はその時、きみだけの僕であるんだよ。

「っ…」

「なっ…なんだよ、いきなり…逃げたりしてさっ、おれの事、呼んだくせに…」

どうしよう、涙が止まらない。
きみの事が大好きで仕方ないよ。

「…渋谷が、僕のことを…っ、…してくれなくても、僕は…」

「何だよ、何泣いてるんだよ村田?…おいっ」

「すきだよ…」

「…っ」

「好きだよしぶや…」

「…わかったよ」

「好きで、好きで…好きで…しかた、なくて」

「…」

「だから…ごめんね、きみを傷つけた…っ、きみが、それでも僕を許してくれたからっ…僕は」

きみを愛してしまったんだ。世界が変わると思ったんだ。
綺麗なひかりが見えなくなったのに。僕は、きみを求めてしまった。

「…村田」

「好きだよ、好きだよ渋谷。これが最後だって思ってたのに僕はやっぱりきみの側に、いたい。ごめん、ごめん…」

「…謝るなよ!」

「…っ」

「…側にいるよ、おれは」

「……どう、して?」

「…理由なんて聞くな」

綺麗に、とても綺麗にきみは微笑った。
ひかりが溢れて、視界がきみのひかりで…

「…っ」

いっぱいに、なった。

「…あ、ぁ…大好きだよ、大好き」

「おれも…村田の事、嫌いじゃないよ」

「しぶやぁ…」

「だからもう泣くな、側にいるから、さ」

「…っ、ありがと…」




バイバイときみは僕に言う
バイバイと僕はきみに言う



そして明日も明後日も
眩い光の中できみに会うよ






2007/1/14より。
ムラユです。今見ると「アゲハ蝶」なカンジ?
夕暮れの告白ってすごい好きなんですよ、シチュが。