かみさまだってしらない




お昼寝のお供は、やさしい風。吹いて乱れるものではないから側に居るんだ。
肩を預けて、ゆったり、深く墜ちていく。
ワン、ツー、スリーでブラックアウト。



村田の声がしたのは、それからきっとしばらく経ってから。
知らないけど、多分おれはあったかくなってたから。
村田の事、今ならあったかくさせてあげられるのに、そう思って指がのびた。

「…」

絡まる感触にむず痒さと果てしない位の安心と、行くなって不安と。
ダメだなぁ…起きてしまいそうだ。
幸せって一瞬なんだよなぁって、心のどっかで思いながらまだ眠っていたくて自分の方に引き寄せる。
そうすると指は簡単に離れてしまって。
自然に漏れる声。

「…ぁ…むらた…」

あ、おれ今寝言言ったな…とか考えたら直ぐにまた指が絡まる。
それをぎゅっとしてみたら返す様に握る感覚。
あ、村田だ。
安心する。
…そうだな、起きたらキスしたい。
キス、したいなぁ。
起きようかな。
村田が居るなら…





「…あ、起きた」

「…」

「おはよう渋谷、でもこんな所で寝たら風邪引いちゃうよ」

「…これ」

「あぁ、寒いかと思って」

「…ひさびさに、見たー…」

「ん?」

「むらたの、シャツすがた」

指は握ったまま。
へらり、と笑う。
村田が優しい顔してるから。

「渋谷」

「…な、もっと」

もっと近く来て。

「どうしたの?」

「…むらた、ちょっとこっち…」

折角起きたんだから、ちょうだい。
ご褒美。

「何?」

「…ちゅー…して?」

…呟いてからやっと、目が覚めた。
恥ずかしい事、言ったよなおれ。
あれ、何してんだよおれ…

「んっ」

「……、しぶや」

「村田…」

「…おはよ」

ちょっとだけ色付いた頬。綺麗だなぁって素直に思うよ、おれ。
夢から覚めてもいいかなって。
だって村田がいるなら。

「…おれ、今幸せだなぁって思った」

「…どしたの」

「至れり尽せりでなんか、王様みたいな気分」

「…王様じゃないか」

そう笑っている村田が幸せそうだから。

「おれ、睡眠より村田を選んだんだ」

笑顔で告げて、おれからキスをした。











2007/1/9より。
一応ムラユ。
自己満足主義な王様とよくわからんけど好きな人が幸せなら嬉しい大賢者。