さんじゅにち。




冬が寒くって
息が白くって

今年も
僕はきみの名前を
呼べなくって



「しぶや」

「ん?」

「……ん、何でも無い」

「えー?」


茶化す笑みも柔らかな冬の日溜まり増す12月最後の土曜日
渋谷の指に絡むのは暖かくない冬の空気
日焼けの跡も消えてしまう季節は少し、眩い


「…もう今年もおしまいかぁ」

「だな」

「今年の渋谷は今日で見納めかな?」

「…明日の夜会うんだろ」

「え、覚えててくれたの?」


この間ぽろりと溢した言葉を、渋谷は拾っていただなんて
…あぁ、嬉しいなぁ


「まぁな、おれだって聞いてないようでちゃんと聞いてるし」

「いつもそうならもっと嬉しいんだけどねー」

「ひとこと多いっての」


『渋谷と年越しそば食べたいな』
何気無く呟いた言葉を大事に持っていてくれたのだから、心は憂う


「じゃあ初詣も行っちゃう?」

「いいよ」

「夜は紅白見ておそば食べてさ、こたつでまったりしながら朝までテレビでも見よっか」

「初日の出見なくちゃだしな」

「そっかー、渋谷と初日の出も一緒に見れるんだね」


年を飛び越えるその瞬間までも一緒に居れるのに、その後も一緒の「はじめて」を沢山経験出来るなんて


「村田、今しあわせーって思っただろ」

「え?」

「顔に書いてあるっての」

「本当?流石渋谷、エスパーだね」

「…今のはからかったつもりなんだけど」

「だって」


だって上手く言えないんだけどそうやって渋谷が綺麗に笑うと心が喜ぶのは僕だけの気持ちだろう?
幸せと思う気持ちより遥かに価値があるんだよ


「…たく、嬉しそーにしちゃって」

「へへ」

「…村田がさ、そういう風に笑う時って」

「ん?」

「おれも嬉しかったりするよ」

「…マジ?」

「…マージーでーすー」

「いたっ」

「全く…いきなり真っ赤になるなよな」

「だからってほっぺつねる事無いだろー?」

「ばーか、だから、だよ」

「!」


柔らかな日差し溢れる12月最後の土曜日
暖かな気がするのは気候のせいじゃなくて隣にいるあたたかな心を持つきみのお陰


「…さーて、映画でも見に行く?」

「うん、……有利」

「ん?ってうわっ!あっぶねーな」

「ごめーん!」

「笑いながら謝るなっ」





冬が寒くって
息は白くって


でもこんなに


あったかい







2006/12/30より。
ほのぼのユリムララブラブなカップルフリフリでチュー(おい)
こんな2人が大好きです。