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デリートボタンを押す。
この記憶が消去出来たらと、何度も思う。
現実はゲームじゃないって沢山の非現実が唱えてる。
でも僕は、デリートボタンを押す。

「疲れた?」

ハッと目を瞬かせると、意識が戻ってそして優しいきみの黒い瞳が見える。
ううん、と首を振ると困ったように彼は笑った。
嘘だ。そう言って1回僕を抱きしめると、ごめんなって呟く。

「何が?」

「だって、負担かけた」

そんなこと、気にしなくてもいいのに。
本気で嫌だったら最初から心に触れる事を許したりなんかしない。
こう見えても僕はかなり繊細だったりもするんだ。
デリートキーが壊れてるから。

「ばかだな」

こうして悲しい顔させたりそれが僕のせいだなんてもっと悲しい事、覚えておきたくなんか無いのに。
積み重なるそれは恥ずかしい事も思い出したくない事も、綺麗に飾っておく。
それでも壊れそうにならないのはきっと、それに勝るものがあるからなんだろうね。

「…おれにもっと、甘えていいから」

「…そう見えないかな?」

「おれだって、お前の事好きなんだぞ?」

嬉しい事言ってくれるよね。
でもその度に僕はきみの事を愛してしまうんだ。
いつかの心変わりを怖がり続ける位なら、いっそ離れた方が賢明なのだろうか。
好きなくせに?

「…でも、僕の方がずっとずっときみの事を好きだよ」

答えはいつも簡単に的確に手に入ると思っていたけれど、こればっかりは頭の中をひっくり返しても見当たらない。
彼の気持ちがこの先も自分に向いてくれるようにするにはどうしたらいいのかな。

「そんなことねぇよ」

ほら、また嬉しい言葉。
でもその分、不安な言葉。
そうやって愛しさを返してこなくなる日はいつだろう。
忘れられる痛みであるなら、もっと正面切ってぶつかれるのにな。





2006/5/26より。
村田さん独白。404 not found出来る日が来るのかしら、と。