ずっとあるはずだった柔らかい思い出の為に






「…コンラッド」

「、ユーリ」

「隣、いい?」

「勿論、どうぞ」

「…ありがとう」

「…?」

「……なぁ、コンラッド」

「何ですか?」

「………手、貸して?」

「…?はい」

「…ちょっと冷えてる」

「そうですか?」

「…いつから此処にいたのか知んないけど」

−ぽんぽん

「?…どうしたんですか?」

「おれにはあんたが何で此処に来たのかは知んないけど」

「……」

「何だかさみしそーにしてたから、さ」

「励ましてくれてるんですか?」

「違う。優しくしてんの」

「優しく?」

「励ましてくれる相手なんてあんたには沢山いるだろ?」

「…」

「だからおれは、あんたが無理して笑わなくてもいー様に優しくしてんの」

「…優しく」

「そ、優しくね」

「…うん」

「…あんたの頭撫でるのなんて初めてだよな」

「そうですね」

「意外と触り心地いいな」

「何か照れますね」

「照れる?じゃあコンラッドを照れさせたい時はこれやるかなー」

「簡単にはやらせませんよ」

「ははっ、言うと思った」

「でも」

「?」

「…今はもう少しこうしていてくれませんか?」

「…うん」

「ありがとう」

「……コンラッド」

「ん?」

「おれもあんたを、守るからな」

「…ユーリは護られる立場にありますから」

「それは解ってる。でもおれは、『守る』んだ」

「守る?」

「…あんたが無くした未来とか、続く筈だった日々とか」

「…」

「…今でも持ってる大切な思い出とか」

「…ユーリ、俺は」

「そういうの全部、おれが守るから」

「……」

「全部ひっくるめて、おれも背負ってみせるから」

「ユーリ」

「そんな寂しい顔すんなよ」

「…」

「あんたの過去の苦しみはおれには全部解んないけど…これからはきっと幸せになるから」

「…」

「…おれがあんたを幸せにするからな」

「…それはプロポーズですか?」

「プッ…プロポーズ?」

「冗談ですよ」

「…まぁ、そう取ってもらっても良いけどさ」

「…ありがとう」

「…何泣きそうな顔してんだよ」

「年を取るとどうも涙脆くて…」

「…泣いたら優しくしてやるよ」

「……ユーリ」

「ん?」

「…今から墓参りに行こうと思うんですが…一緒に来てくれますか?」

「…うん」




2005/8/9より。
ささやかなる愛の言葉とヘタレ次男。