内部告発





グリ江・ヨザックは語る。







−グリ江さんこんにちわ。今日はとっておきのお話をしてくださるという事で。


「えぇ、グリ江イチオシの話を」


−ルッテンベルク師団時代の話だと言うことで。私はまだ想像がつかないのですが、早速お聞かせいただけますか?


「はい、これはグリ江が第十二師団リメリック隊にいた頃の話なんですが…隊長、コンラッド隊長ったらやたらにグリ江達に筋肉を沢山鍛える事を要請してきたんです。強制ではなかったの、だって筋トレはいつもやってたから」


−ほう、でも皆さんは課せられた筋トレ以上に筋力アップの向上をはかったんでしょう?


「ええ、皆隊長を信頼してたから。隊長に笑顔で『もっと筋肉をつけた方がいいよな』って言われたら、じゃあやりましょうって気分になりますもん」


−そうですね、ウェラー卿は信頼も厚かったですし。


「そう、それに筋肉がつく度に隊長の機嫌も良くなっていくから皆張り切っちゃって。隊の結束も深まるし筋肉もついて一石二鳥といいますか、あ、今のは陛下語だったかしら?(笑)」


−(笑)。一石二鳥の意味、調べておきますね。聞く限りウェラー卿の行動には特に怪しげな点はありませんが、この後何かあったんですか?


「あ、そうそう、ここからおかしくなっていくのよぉ。ある日グリ江だけが隊長に呼び出されて。何かしら?まさか愛の告白でもされちゃうのかしら?って行ったら」


−行ったら?


「いきなり真面目な顔して『お前はもっと筋肉を鍛えるんだ』って言われちゃったの」


−ほぉ、直々に筋肉強化の命が下った訳ですね?


「はい、『お前には素質がある』って真剣な顔で言うからつい頷いちゃって…、そしたらその日から私だけ特別メニューが加算されるようになって」


−特別メニューとは?


「えっと、まず乳、特にヤギ乳を沢山飲まされて。それからいつもの筋トレの二倍量をやらされたわぁ。あれは大変だった」


−ウェラー卿はそれまでして筋力アップに力を入れられたんですね。


「そうね、そしたらそれを見てた皆も同じように筋トレを始めて。その時の隊長の表情、今でも忘れられないわ」


−一体どんな表情を?


「なんていうか…ニヤニヤが抑えられないというか、思い通りにいきましたヒャッホー!というか、いつもの爽やかな笑顔にはやはり裏があったのね!と確信づけるような笑みだったわぁ」


−(笑)。グリ江さん楽しそうですね。他の皆さんはその表情に気づかれていたんですか?


「いや、気づいてなかったわ。あれはグリ江が隊長と長いつき合いだったからこそ読みとれたものよ」


−流石幼なじみ。それから少しずつ、ウェラー卿の趣味が暴かれていくんですか?


「そうね。というか気づいたのはグリ江だけだったのかも。皆この筋トレはただの筋トレだと信じ込んでいたから」


−「ただの」という響きに何か裏を感じますね。


「うふ、そうかしら。だって隊長のあんな黒い笑みを見ちゃったら誰だって疑いたくなるわよ。爽やか通り越して寒かったもの。顔に『うははは』って心の高笑いが浮かんでるようだったわ」


−(爆)。高笑いですか。あのウェラー卿からは想像できない様子ですね。それでグリ江さんはそんなウェラー卿の態度の裏には何が隠れている、と読んだわけですか?


「その時はグリ江も、隊長が何でそんなにキモい笑顔浮かべてウハウハニヤニヤしてるのかがわからなかったの。でもね、ある日見てしまったの」


−おお、何をですか?


「グリ江の次に筋トレを頑張ってる兵がいてね、隊長がそいつに話しかけてたのよ。何を言ってるのかは解らなかったんだけど、隊長がその兵の背後に回ってお尻を軽く叩いたのよ」


−え!?尻をですか?


「多分ケツ筋がついたかとかそんな事を話してたと思うの、兵も慌てた様子じゃなかったしグリ江もスルーしようとしたのね、でもその時」


−その時?


「グリ江は見てしまったの、隊長の瞳の輝きが怪しげに歪んだのを!」


−怪しげに!


「兵のお尻を叩いた後のニヤリとした表情!!毒女アニシナを思い出させるようなあの笑み!」


−ど、毒女ですか!


「ええ、グリ江には聞こえたわ。『こいついいケツしてんなぁ』っていう隊長の心のニヤニヤが!」


−ウェラー卿が「いいケツしてんなぁ」ですか!?…私驚きで眼鏡がズレそうでしたよ。


「ええ、もしくは『俺好みのケツだ』ね。グリ江驚きと興奮で胸がピクピクしちゃったわ」


−うわぁ。今でもピクピクしてますね。


「それからよくよく隊長を観察してみると、部下の筋肉をやたらに褒めているのね。それもあの兵は腕、とかあの兵は脚、とか」


−それは部分部分、お気に入りがいたという事ですかね?


「そうとしか見えなかったわ。その部分をさり気なく叩いたり触ったりして『筋肉ついたなぁ』とか『これなら即戦力になるな』とかもっともな事を言ってるんだけど…その笑顔が爽やかすぎてキモいの」


−爽やかとキモいは時に紙一重になるんですね。グリ江さんも勿論、ウェラー卿に気に入られていたんでしょう?


「ええ、それはもう。馴染みの仲でもあるからよく一緒にいたんだけど、触られたわねぇ」


−具体的にはどこを?


「あらやぁだ、何だか恥ずかしいじゃない。どこを触られた、なんて」


−あっ、すいません。女性にこんな質問は不躾でしたね。


「ふふ、グリ江をちゃんと女性扱いしてくれたから許してあげる。ちなみによく触られたのは、この自慢の胸(筋)よ」


−お許しありがとうございます(笑)やはり胸(筋)でしたか。グリ江さんの鳩胸は皆に一目置かれていますからね。


「あと上腕二頭筋かしら。さり気なく触りながら惚れ惚れしてる隊長の顔を思い出すだけでヤギ乳口から噴き出しちゃうわぁ」


−相当愉快な表情だったんですね。


「えぇ、しかも『やっぱり俺が見込んだだけある』とか嬉しそうに言うのよ。皆はそれを純粋な褒め言葉として素直に受け止めれるからいいんだけど、グリ江にはそれがウケるやらキモいやらで、愛想笑いを保つのでいっぱいいっぱいだったわ」


−グリ江さんは笑顔が素敵ですから愛想笑いもお上手なんでしょうね。


「あらお上手ね、嬉しいわ。それでね、グリ江聞いてみたの。どうしてこんなに胸(筋)を鍛えるのかって。隊長はその頃特に胸筋アップに力を入れてたから」


−ほうほう。


「そしたら妙に焦ったように『と、飛び道具から心臓を守るのにいいんだ』って。明らかにどもってるのに笑顔を浮かべる隊長を見て、この人キッツー!って思ったわ」


−(笑)グリ江さん辛口ですね。まぁどもりながら爽やか笑顔はアイター、な話ですが。


「でしょう?それでグリ江確信したの。この隊長、筋肉フェチだって」


−筋肉フェチ、ですか(汗)


「ルッテンベルクの獅子って言われてるけど所詮はただのマッチョスキーだったわけよ」


−…なんか私、ウェラー卿に対するイメージがガラッと変わりました。


「まぁあの爽やか笑顔からは想像つかないものよね。部下の筋肉を鍛えさせてマッスルハーレムを創ってたなんて」


−マッスルハーレム!す、凄いインパクトのある言葉ですね!グリ江さん、これは大スクープですよ。『ルッテンベルクの獅子、ウェラー卿コンラート閣下は実はマッスルハーレムを建設していた!』なんて。シンニチのトップを飾りますよ!


「そうね、グリ江だけが知る真実だしぃ。でもちゃんと裏を取れば立派な記事になるわよん」


−グリ江さん、ありがとうございます!早速編集部に戻って上にかけあってきますね!


「お役に立てたならグリ江は嬉しいわぁん」


−で、お約束の報酬の方です…。


「あら、ありがとvV」


−また何か裏話でもありましたらシンニチにご連絡ください!


「はいはぁいvV」











−後日、もの凄い形相でヨザックを探し回るマッスルハーレム建設者の怒声が血盟城に響きわたった。



とか。






end.