きみに告グ






長い長いくきの先


紅の可憐な花が咲く


どこにいった


どこにいった


愛しきひとは いつ帰る











「はなー、すくすく」
「ゆーたんのも、すくすく」
「すくすく、そだってるね」
「ねぇ、うぉーふ」
「なぁに?」
「ゆーたんの、はな、さいたら、うぉーふ、に、あげるー」
「ゆーりの、はなー?」
「うん、ゆーたんの、はな、うぉーふ、に、ぷれぜんと」
「うぉるふ、もらっていいのー?」
「うんー、あげるー」
「ありがとー、ゆーり」
「よかったね、うぉるふ」



「……ユーリおとーさま」
「………」
「…ヴォルフおとーさま」
「………」
「…っく、ぅ…おとーさまぁ…おとーさまぁ…」



「ゆーり、ゆーり」
「あー、うぉーふ」
「こっちきてー」
「うー?」



「グウェン…ヴォルフおとーさまはどうなってるの?」
「今は…まだ連絡がないからわからない」
「……そっか……ねぇ、おとーさまは帰ってくるよね?ヴォルフおとーさまもユーリおとーさまも、グレタの前からいなくならないよねぇ?……いやだよ……グレタ大好きなのに……いなくなったらやだよ……!」
「大丈夫だ、絶対いなくならない!…ヴォルフラムも、ユーリも」



「あい、ゆーり」
「なーに、これー」
「うぉるふの、だいじなものー」
「うー?はーと?」
「はーと?なーに?それー」
「この、かたちー」
「ゆーりのくにー、これー、はーとってゆーんだねー」
「うんー」
「これねー、はんぶんー、ゆーりにあげるー」
「ゆーたんにー?」
「うんー、うぉるふー、ゆーりにぷれぜんとー」
「あいがとー」
「くっつけるとー、いっこになるのー」
「わー、すごい、ねー」
「うぉるふはー、いつもー、ここにしまっておくねー」
「うんー、わかったー」



「閣下はご無事なんでしょうか…」
「私の元にはまだ連絡は入ってないですが…ヴォルフラムだって弱い訳ではありませんから、ちょっとやそっとじゃくたばりませんよ」
「そうですか…でもなんだか気になって」
「…どうかしたんですか?ギーゼラ」
「陛下がお目覚めになられない事を酷く気にされていましたから」
「……陛下…」
「ええ…」
「ギュンターはいつまでも陛下がお目覚めになられる日をお待ちしております…」
「陛下…閣下にご加護を」



「……、みてー」
「それ、うぉるふの」
「もらった、のー」
「よかったね、ゆーり」
「うんー、きれー」
「なくさない、ように、くびに、かけてね」
「うんー」
「はい、これで、よし」
「あいがとー」



「坊ちゃん……」
「………」
「…どうしてこんな酷い運命を辿るんだ?…これが眞王様ってのの意志なのか?」
「………」
「…コンラッド…お前は全てをどう受け止める?」



「あ、つぼみー」
「つぼみだー」
「もうすぐ、さくね」
「たくさん、ねた、からー」
「そうだね、うれしいね」
「うんー、ゆーりのと、うぉるふのと、……の、みっつー」
「うん、みっつだ」
「うきうきー、するー」
「うんー」



「………」
「………」
「………ふ」



「あかい、はなー」
「さいたーさいたー」
「きれい、だね」
「すっごく、きれー」
「うれしいねー」
「うんー、きれー」
「このはなは、ね、………って、いうの」
「うー?」
「ゆーりの、くにだと、………」
「そー、なんだー」
「……、ものしりー」
「ありがと、うぉるふ」



らん らん らん
らん らん らん
らん らん らん



「…おとーさま……」
「………」
「ねぇグウェンっ!おとーさまがっ!」
「なんだ!?ユーリがどうかしたか?」
「…泣いてる」
「……本当だ…」
「……おとーさま…何を見てるの?」



「うぉーふ」
「んー?」
「これー、あげるー」
「うん、ありがとー、ゆーり」
「でねー、ゆーたんねー」
「んー?なぁに?」
「うぉーふが、すきー」



「うぉるふも、ゆーりがすきー」
「えへへー」
「えへへー」
「うぉーふ、おでこ、ちゅー」
「ちゅー」
「えへへー」
「ふたりとも、よかったね」
「……、うぉーふが、ゆーたん、すきー」
「……、ゆーりも、うぉるふが、すきー」
「うん、すきどうしだね」



「……ユーリ……」



「ねぇ、うぉーふ」
「んー?」
「ゆーたんと、うぉーふ、ずーっと、いっしょ?」
「うんー、いっしょ、ずーっとずーっと」



りゃん りゃん
りゃん りゃん
りゃん りゃん



「………あ」
「っ!おとーさまっ!?」
「何っ!?ユーリ?」
「……何…あれ…?」
「…おとーさま…おとーさま…!!」
「え…?何…グレタ?」
「おい!陛下が目を覚まされたぞ!」
「…あれ、おれ…寝てたんじゃないの?」
「おとーさまは…ずーっと起きなかったんだよ?」
「……そうだったんだ」
「陛下っ!ああっ、よくぞお目覚めになられました!」
「ギュンター…泣くなよ」
「泣かせてくださいませっ!ギュンターはずっと陛下のお目覚めをお待ちしておりましたっ!!」
「陛下…本当によかった…」
「ギーゼラ…」
「おとーさまぁ…っ」
「グレタも…グウェンも、何だか心配かけてたみたいで…ごめん」
「ううんっ!グレタおとーさまが目覚めなかったら…ひとりぼっちになるかと思ってた…!」
「そんな、おれがグレタを残して死ぬわけないだろ……ん、ひとりぼっち?」
「………ぁ」
「そういえば、ヴォルフは?」



「お待ちください陛下っ!」
「だって、だってヴォルフがっっ!!!」
「お気を確かに!陛下っ!」
「そんなっ、そんなバカな事がっ……!!なんでなんでっ!!」
「ユーリ、しっかりしろっ!…お、お前、それは?」
「えっ?何だよっ!?……何、この首飾り」
「これは…ヴォルフの」
「………!!ヴォルフっ!!!」
「あっ!陛下!」



「……なんで、なんであの夢で出てきたハートの欠片が…」

「ヴォルフが言ってたのはきっと…ここだ」



さら さら
さら さら
さら さら



「……あった…半分だけのハート…どうして……手紙?」



『ユーリへ

この手紙を読んでいるという事は、お前はぼくがいない間に目覚めたという事だな。本当はぼくが一番にお前にへなちょこ!と言うはずだったんだが…仕方ない。お前はどこまでもへなちょこだからな。
だが、お前が目覚めた事は凄く嬉しい。今も書きながらお前がまたぼくにへなちょこと言われる姿を想像している。お前はきっとへなちょこいうな、などと言ってくるだろうがお前のへなちょこはいつまで経っても直らないからいい加減認めろ。
それよりもお前は笑っている方がいい。ぼくはお前が眠っている間、色んな事を考えた。楽しい事、辛い事。でもお前がいるだけで全部、かけがえのない時間になると気づいた。眠っているお前の横にいるだけでもよかった。
あぁそうだ。雪が降ったんだぞ。グレタと雪を食べた。あれは冷たかった。それに虹が凄く綺麗な日があった。
それとギーゼラに言って花をもらってくれ。お前の世界ではバラというらしい。あれはお前によく似合う。お前が目覚めたらすぐに見せてやりたかった。
ぼくは少し仕事に行ってくるが、すぐに戻ってくるつもりだ。他にも言いたい事は沢山あるんだがあとはグレタにまかせてあるからぼくからの言葉だと思って聞け。
もしぼくが戻らなかったら…いや、そんな話はやめよう。
でも、最後になるかもしれない。だから言っておく…。ぼくはいつまでもユーリと一緒にいたい。ユーリに笑いかけてほしい。
ユーリが目覚めない間、ぼくは生きた心地がしなかった。だから次に会う時はユーリの笑顔が見たい。そうしたらぼくは、きっとまた地に足がつくと思う。
あぁ、一度も言った事がなかったから今言っておきたい事がある。ユーリ、ぼくはお前が…』



「…好…き……だ」



からん からん
からん からん
からん からん



「あ…あ、あああああっ!!!ヴォルフヴォルフヴォルフっっ!!!!!やだやだやだやだやだぁぁぁぁ!!!ヴォルフっ!!」
「坊ちゃん!」
「ヨザック!ヴォルフがっ、ヴォルフがぁっ!おれの事ずっとずっと待っててくれたのにっ!!うあああっ!ヴォルフがぁ……っ!!!」
「坊ちゃん……!!」
「おれもっ、ヴォルフにっ好きだって言ってない!!なのにヴォルフっ!どうして…どうしてっ!!!」
「落ち着いてっ…!」
「やだやだっ!ヴォルフを返してぇぇっ!!言ったじゃん!ずっと、ずっと一緒に居てくれるって!ヴォルフっ!!返してぇ…!」












まっ赤な まっ赤な


曼珠沙華


愛しきひとに


あげるから


どうか 笑顔で


戻ってきて


ずっと ずっと


待ってるから。








end.