フェザー






おれが何処に居るかわかる?
きっと考えても判らないと思うんだけど、此処に居るんだよ。
おれからはその答えを言えないんだけど、もし気付かなくっても怒らないよ、そんなん当たり前だし。
そうだな、グレタならわかるのかも。ほら子供ってよく不思議なものが見えるって言うし。
あぁ、そんな顔しないで。グレタだってもう泣いてないのに。
おれが好きなのは笑顔だからって笑ってくれる健気な姿にこっちが泣けてくるぐらいなんだぜ?
ああーそんなにしたら顔赤くなっちゃうだろ?ちゃんとハンカチとか使ってさー、お前持ってそうな顔してんだから。
…だからそんな顔するなって。笑えとは言わないけどさ、怒ってた方が寧ろ似合ってる気がするし。
第一あんまりニコニコ愛想振りまいてたらちょっとだけ心配になっちゃうよ。
うん、うん…、ごめんな。悲しい顔させてるのはおれのせいだよな。
頭撫でてやりたいんだけどどうも上手くいかないな。うーん、ごめんなへなちょこで。
折角側に来れたのに触れないのもまたつまんないけど…取りあえず、健康そうでよかった。
傷も残ってないみたいだし…。ホント、顔に残っちゃったらどうしようかと思ったよ。責任取れ!とか言われそうだし。



…なぁ、責任取れなくてごめんな?



そうだな、じゃあ楽しい話しよう。グレタがアニシナさんとお菓子作ってくれたときのやつ。あの時『どっちかに苺、どっちかに毒苺が入ってまーす』って言われた時は怖かったよな。冗談でも冗談に聞こえないって言うか。
それでさ、わざとおれが毒に当たった振りしたらヴォルフがすっげー驚いちゃってさ、あの時は本気で人工呼吸されるかと思ったよ。
…おれの話つまんなかった?そんな寂しそうな顔してたらおれ自信無くしちゃうぜ?なぁなぁ、早く笑ってよ。でないと襲っちゃうぞ?
…って、おれ何言っちゃってんの??嘘です、今のは嘘!襲ったりなんかしないからマジで!!本気に取るなよお願いだからー…あれ?

「ヴォルフ?」

あー…もう時間切れか。久々に会えたのに気付いてもらえなかったな。
…グレタもすっかり大きくなって。抱きしめたいな。いいなーヴォルフは。
うん、あのワンピースも凄く似合ってる。

「グレタ」

「皆待ってるよ?早く行こう?」

お。今ちょっとだけ笑ったかも。
でも見たいのはもっと満面の……

「あぁ、すまない」

「…ユーリのこと考えてたの?」

「…あぁ」

……だめだ、もう行かなきゃ。……それじゃあ、ヴォルフ、グレタ…また………

「え?」

……あ、そうだそうだ………

「どうしたグレタ?」

「今…ユーリの声が…」

…ヴォルフ、ほら………

「ユーリ?」

「…ヴォルフ、見て…」

「……黒い、羽根だ…」








……この羽根、結構…格好良くない…?……








「…ユーリが飛んでくよ、ヴォルフ」

「……そう…か」




end.


…少年は鳥になった。なんつって。