DOLL







あなたは僕を、見ていない。
僕だってあなたなんか見ていない。
じゃあ何を見ている?感じている?そして紡いでいる?
何も見ないで感じないで紡がなければ





「んっ…んっ……」
激しく鳴る体に舌を舐めた。揺さぶればまるで鈴のように口から声が漏れていく。
ちりちりちりちり、煩いほどにそれは耳に残って直ぐに麻痺してしまう。
そして音がなくなった時、寂しいと思うのはマゾの証だという。
「うるさい」
どうしてだろう。殴りたくなる時がたまにある。勿論そんな事をしたら止まらなくなってしまうのも解っている。解っているのに止められない。でも理由が無いと全ての物事は成立しない。
「…っ……」
殴りたい。殴りたい。そのこめかみ辺りをバシリ、と叩いたらどんなになるだろう。
バンと叩いてはたいて殴ってめちゃめちゃにしてそんでもって首を絞めて。
バンと叩いてはたいて殴ってめちゃめちゃにしてそんでもって首を絞めて。
バンと叩いてはたいて殴ってめちゃめちゃにしてそんでもって首を絞めて。
ああどうにかしてしまいたい。これは狂気であって決して、愛情ではない。
「ああっ」
欲求不満が暴発する。全部出し切るように達した勝利さんの萎えた欲望の種を握りこむ。
すると痙攣する様に喘いで掃除機のように中に埋まった僕の一部から精子を吸い取っていく。
「勝利さんは欲張りだね、こんなに搾り取ろうとして」
「…痛いっ」
「ねぇ、勝利さんはマゾ?嬉しそうな顔に見えるんだけど僕には」
キスなんてしたくもない。したいのはセックスだけ。
欲望を押し付けて喰らって貪りつくしていたい。
酷く欲情するのに、酷く嫌いにもなる。不思議だ。
「やめろっ…村田」
「抵抗とかすると、僕に犯されてるみたいだね」
「俺はそんなんじゃっ…」
「弱いって悲しいことだよね」
手を振り上げて、勢いを付けて。ひゅ、息を飲む姿がまた気に食わない。
「嘘だよ」
吐き出してしまいそうな其れをぐっと抑えて手を下げる。そのまま狂気じみたセックス―何て一方的な!―を終わらすべく、繋がりを解いた。
「…っん」
声を漏らす相手の鼻先にドロドロになったモノを突き出す。
「手は使わないで」
宣告、真上から言い放つ。鼻を摘んでやると口を開けて、突っ込んでやると低く唸った。
「掃除する程度で良いから」
鼻を開放してやると観念したのか汚れを拭き取る如く僕のを口に含み、舐めあげた。
唾液が絡みつく方が幾分マシだ。気持ち悪さは乾くとどうしようもない。
「…ふ、…っん」
「そうだね、もういいよご苦労様」
頭を手のひらでぐっと押して離れると、人形みたいな勝利さんを尻目に体を拭いた。
僕を嘲笑っているのかいないのか、いつもと同じ様に声はかけられない。
タオルを渡すとそのまま横に座る。
「村田」
いつだってもどしそうな胃液をぐっと堪えて平常心を保っているのに誰もそれを褒めてはくれない。
「何」
でも吐き出すと決まって怒られる気がして、いつからか堪える癖がついていた。
「俺はお前に犯されてるのか」
それでも喰らう事を止められないのが最大の弱点。汚点。欠点。
「…そう思うの?」
「わからない」
嘘。本当は褒めて欲しくも無い。惨めになるだけだ。そんな苦しみなんて誰にも気付かれたくないし、言わないし、聞かれたくない。
「勝利さんは玩具みたいだよ」
自分でさえも気づかないのであればどんないいいものか。苦しんでるのに苦しんでない錯覚を覚えさせるのが楽しい事。
それが勝利さん。
「俺のこと、好きか」
「うん、勿論好きだよ」
殴りたいくらいに。
壊したいくらいに。
首を絞めて、額を裂いて、胸にナイフを突き立てて。
「そうだと思った」
でも僕は意思を持つ人形が欲しいから自らそんな真似はしないけれどね。





何も見ないで感じないで紡がなければ
それはまるでお人形の様


あぁ、赤が似合うお人形が欲しい








end.




うーわーなにか悪霊が!!!悪霊がついてますよ!!!!!ごめんなさ…