罪と罰と許される痛みと







僕は大賢者だよ?
渋谷の考えてる事くらいお見通しなんだよ。





村田は笑った。
哀しげに、笑った。
いつもポーカーフェイスな村田は今回は、何も隠さなかった。
それがおれは、とても悔しくて…寂しかった。

「僕はきみが無事で居てくれたのが、嬉しい」

ぎゅっと、背中に回された腕が少し震えていた。
抱きしめ返すと、村田は耳元で小さく囁いた。
ごめんね、って。

「村田、おれ」

「もう、解ったから」

「おれ、おれほんとに…」

「謝らないで!」

「むらた!」

どうして、ごめんなんて言うんだ。

「…」

「どうして…おれがいけなかったのに、どうしてお前が謝るんだっ…!」

おれのせいなのに、おれが村田の大事な、大事な…。

「渋谷、僕は仕事と恋愛ならきっと、仕事を取るタイプなんだ」

「…」

「僕はきみの側に居られなくなるのなら、きっと恋だって捨ててしまうよ?」

それならどうして。

「なんで…」

なんでそんなに、泣きそうな顔して笑うんだよ?

「そんなの…聞かないでよ」

「…ごめん」

「謝るなよっ…!」

「だって!ごめんって言わせてくれよ!おれを責めてくれよっ…!」

許さないで。嫌って。
おれは、村田の大切なものを奪ってしまったのだから。

「渋谷が謝ったら彼の行動は無駄になるっ…!!」

「っ!」

「責めたって、そんなの彼が戻ってくるわけじゃないのに…」

「…む、らた」

「ねぇ、解ってよ。僕がきみの事を解るように僕の事も解ってよ…魔王なんだろう?」

「……」

「彼が死んだとしても、僕は決して後を追わないけど、もし渋谷が死んだら後を追うかもしれない」

「…そんな事言うな…」

たかがおれの為に、そんな事を。

「渋谷、泣かないで…」

「違うっ、村田の代わりに泣いてるんだよっ…!」

「…」

「村田がっ、おれを大切にしてくれるのが凄くっ…切ないんだ…」

「…渋谷」

「おれの命は絶対に、ヨザックより重いとかじゃない…っ村田だって、知ってるのに!おれを、おれを想ってくれてるからっ…本当は解ってるのに、こんなこと言ったらヨザックがしたことっ、誇り…を、踏みにじる事になるって解ってるのに…」

「……」

「でもっ…本当はおれが代われたらって…思っちゃうんだよっ…」

「…渋谷は、魔王なんだよ、護られていいんだ」

「そんなことないっ…!村田が悲しい顔、隠さないのは本気だったからだろ?こうやっておれを慰める村田は意地悪だ…っ!」

そうされるべき立場であるのはおれじゃないのに。
どうしておれはこんなにも、無力で、自分勝手で。

「渋谷…、−ぁっ…」

ぎゅっと抱きしめて、苦しいくらいに抱きしめて泣いた。
泣けない親友の代わりに、その優しさに、罪に対する謝罪に。
村田の頬から涙が流れ落ちるのを感じた時、哀しくて胸が張り裂けそうだった。






end.